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【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

全身性ステロイド投与による胃腸障害はPPIやH2ブロッカーで予防できますか?~case5

久々にクリニカルクエスチョンを頂いたので今回はそちらについて記事を書いていこうと思います。

 
 
ある薬剤師の先生から「経口ステロイドを服用している患者の胃腸障害予防のためにルーチンでPPIやH2ブロッカーが併用されてるんだけど、それって効果あるの?」という疑問をいただいたのでまずは疑問の定式化をしてみます。
 
P : 経口ステロイドを服用している患者が
E : PPIやH2ブロッカーを併用した場合
C : 併用しない場合と比べて
O : 胃腸障害を予防できるか?
 
なるほど、興味深いテーマですね。
疑問を定式化したところで先に結論を述べさせていただきますが、検索してみたものの経口ステロイドによる胃腸障害と制酸薬について検討した論文は見つけられませんでした。
どうやらエビデンスはないようです。なんかすみません…
 
 
では、そもそも経口ステロイドを服用することによる胃腸障害のリスクはどれだけあるのかについて調べてみたところ(決してこれだけじゃ記事にならないから話しを変えてとかそういうアレじゃないです)、いくつか論文を見つけたので読んでいこうと思います。
 
 
 
①「Corticosteroids and risk of gastrointestinal bleeding: a systematic review and meta-analysis.」
PMID: 24833682
 
[PECO]
P : 159のRCTに参加した33253人
E : 経口又は静注・筋注によるステロイド
C : プラセボ
O : 消化管出血又は穿孔
 
[チェック項目]
・研究デザイン : システマティックレビュー&メタ解析
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・評価者バイアス : 「Titles, abstracts and full-text articles were evaluated and reviewed for inclusion by at least two of the authors」と記載されているが、独立していたかどうかの記載は見当たらない
・出版バイアス : 言語の制約なく検索されている
・元論文バイアス : 全て2重盲検が行われているRCT
・異質性バイアス : 異質性検定が行われている
・追跡期間中央値 : 56日
 
[結果]
E群(2.9%) vs C群(2.0%)→オッズ比1.43(95%信頼区間1.22~1.66)、異質性:P=0.53,I2=0%、NNH=112人
 
またサブグループ解析では、
・入院患者 : E群(37.9/1000人) vs C群(26.4/1000人)→オッズ比1.42(95%信頼区間1.22~1.66)
・外来患者 : E群(1.8/1000人) vs C群(0.7/1000人)→オッズ比1.63(95%信頼区間0.42~6.34)
 
[感想]
各種バイアスについて不明な点が多く、また半分以上が入院患者を対象にしたもので、比較すると外来患者を対象にしたRCTは少ない印象のため注意が必要ですが、ひとまずは全身性ステロイドを使用する事で消化管出血又は穿孔のリスクは増加するが(112人に1人)、外来患者では増加させないかもしれません。
 
 
次はちょっと古めの論文を
 
②「Corticosteroids and peptic ulcer: meta-analysis of adverse events during steroid therapy.」
PMID: 7989897
 
こちらは残念ながら抄録までしか読めませんが、2重盲検が行われているRCT93試験に参加した6602人について解析されたメタ解析で、ステロイド投与群で0.4%、プラセボ群では0.3%に消化性潰瘍の発症があり、P>0.05と有意な差は見られていないようです。
 
 
最後に更に古い論文を
 
③「Association of adrenocorticosteroid therapy and peptic-ulcer disease.」
PMID: 6343871
 
こちらも残念ながら抄録までしか読めませんが71RCTに参加した5961人について解析されたメタ解析です。全身性ステロイド投与群とプラセボ群で比較されており結果は以下に。
 
[結果]
・消化性潰瘍 : E群(1.8%) vs C群(0.8%)→相対リスク2.3(95%信頼区間1.4~3.7)、NNH=100人
 
・消化管出血 : E群(2.5%) vs C群(1.6%)→相対リスク1.5%(95%信頼区間1.1~2.2)、NNH=112人
 
 
 
ひとまず見付けられたのは以上の3報で、そのうちまともに読めたのは1報のみでそれについても妥当性については疑問が残るものではありますが、個人的な印象としてはステロイドの使用は消化性潰瘍等のリスクになるものの関連はそれほど強いものではなく、ルーチンで制酸薬を併用する必要はないのかなと感じました。
その一方で入院患者では消化管出血等のリスクが増加する事が示唆されており、リスクが高くなってしまうかもしれない人達がいるという点については注意が必要だと思います。
 
また、低用量アスピリンやNSAIDs等を服用している場合や胃潰瘍の既往がある場合等についてもやはり注意が必要かなとは思いますが、効果は期待できそうではあるものの初めに書いたようにPPIやH2ブロッカーが予防に効果があるというエビデンスは今のところないためなかなか悩ましいところではあります。
 
 
なんだかモヤモヤしたところで今回は終わりにしますが、今後もこのテーマについては調べていきたいと思います。
ご意見等ございましたらコメント欄に書いていただいて構いませんので、もし良ければ一緒に考えていきましょう。よろしくお願いいたします!