【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

エンパグリフロジンは糖尿病の治療に効果がありますか?

その話題もういいよ!という方も沢山いらっしゃるかとは思いますが、自分でも読んでみようということで。
 

「Empagliflozin, Cardiovascular Outcomes, and Mortality in Type 2 Diabetes」

September 17, 2015DOI: 10.1056/NEJMoa1504720
 

PECO

P : 心血管疾患の既往がある18歳以上でeGFRが30ml/分/1.73m2以上の2型糖尿病患者。ランダム化が行われる12週以前に血糖降下薬による治療を受けない状態でHbA1cが7.0~9.0%、又は12週以前に血糖降下薬による治療を受けている状態でHbA1cが7.0%~10.0%。(42ヶ国、7020人)
E : エンパグリフロジン10mg/日又は25mg/日(4687人)
C : プラセボ(2333人)
O : 心血管死・非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中の複合アウトカム
 

チェック項目

・研究デザイン : ランダム化比較試験(非劣性試験)
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・ランダム化が行われているか? : 行われている
・盲検化が行われているか? : 行われている
・per-protocol解析が行われているか? : modified ITT解析が行われている
・追跡率 : 99.2%
・追跡期間中央値 : 3.1年
・患者背景 : 気になるような偏りは見られない、平均年齢63.1歳・平均BMI30.6・平均HbA1c8.07%
・サンプルサイズ : 7000人(検出力90%)
 

結果

※非劣性マージンは1.3
 
E群(10.5%) vs C群(12.1%)→ハザード比0.86(95%信頼区間0.74~0.99)P<0.001、NNT=62.5人
 
 
複合アウトカムの各要素は
・心血管死 : E群(3.7%) vs C群(5.9%)→ハザード比0.62(95%信頼区間0.49~0.77)P<0.001、NNT=45.5人
 
・心筋梗塞 : E群(4.8%) vs C群(5.4%)→ハザード比0.87(95%信頼区間0.70~1.09)P=0.23、NNT=166.7人
 
・脳卒中 : E群(3.5%) vs C群(3.0%)→ハザード比1.18(95%信頼区間0.89~1.56)P=0.26、NNH=200人
 
 
有害事象は性器感染症がエンパグリフロジンで増加している→エンパグリフリジン10mg/日群(6.5%)・エンパグリフロジン25mg/日群(6.3%)・プラセボ群(1.8%)
 

感想

クラスエフェクトなのかエンパグリフロジン固有のものなのか気になるところですが、なかなか衝撃的な結果ですね。
 
既に他の先生に指摘されている事ですが、今まで読んできた論文では複合エンドポイントの場合、「死亡については有意な差は見られないけど、心筋梗塞で有意差がある」などで複合エンドポイントとして有意差があるといったものが多かったのですが、逆に「心筋梗塞・脳卒中は減らさないけど死亡は減らす」という結果はなんだか不思議な感じがします。
 
また、非劣性試験のためmodified ITT解析が行われていますがITT解析よりも差が出やすい可能性があるため注意が必要かなと思います。
 
まあそれにしても、心血管疾患の既往がある肥満の患者が対象のためハイリスク・肥満ではない患者に対する効果は不明ではありますが、今後の糖尿病治療に大きな影響を与えそうですね。