【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

バレニクリンは心血管イベント・うつ病を増加させる?

「Cardiovascular and neuropsychiatric risks of varenicline: a retrospective cohort study」

 

PECO

P : 18~100歳の患者(英国、164766人)
E : バレニクリン(51450人)・ブプロピオン(日本未承認)(6557人)
C : ニコチン置換療法(106795人)
O : 虚血性心疾患・脳梗塞・脳出血・心不全・末梢血管疾患・不整脈・うつ病・自傷行為
 

チェック項目

・研究デザイン : 後ろ向きコホート研究
・真のアウトか? : 真のアウトカム
・交絡因子の調整は? : 年齢・性別・経済的な状態・医療を受けられる状態・併存症・飲酒について調整されている
・対象集団の代表性は? : 英国における一般診療のデーダベースが使用されており大きな問題はないように思われる
・追跡期間 : 治療開始後(治療期間は通常12週間)6ヶ月間
 

結果

 [虚血性心疾患]

・バレニクリン群(23.4/1000人年) vs ニコチン置換療法群(41.1/1000人年)→調整ハザード比0.80(95%信頼区間0.72~0.87)

・ブプロピオン群(16.0/1000人年) vs ニコチン置換療法群(41.1/1000人年)→調整ハザード比0.67(95%信頼区間0.51~0.89)

 

[脳梗塞]

・バレニクリン群(6.4/1000人年) vs ニコチン置換療法群(16.6/1000人年)→調整ハザード比0.62(95%信頼区間0.52~0.73)

・ブプロピオン群(5.5/1000人年) vs ニコチン置換療法群(16.6/1000人年)→調整ハザード比0.55(95%信頼区間0.35~0.89)

 

[心不全]

・バレニクリン群(2.0/1000人年) vs ニコチン置換療法群(5.7/1000人年)→調整ハザード比0.61(95%信頼区間0.45~0.83)

・ブプロピオン群(2.1/1000人年) vs ニコチン置換療法群(5.7/1000人年)→調整ハザード比0.71(95%信頼区間0.33~1.51)

 

[末梢血管疾患]

・バレニクリン群(4.8/1000人年) vs ニコチン置換療法(8.1/1000人年)→調整ハザード比0.82(95%信頼区間0.67~1.01)

・ブプロピオン群(4.3/1000人年) vs ニコチン置換療法群(8.1/1000人年)→調整ハザード比0.83(95%信頼区間0.48~1.41)

 

[不整脈]

・バレニクリン群(4.9/1000人年) vs ニコチン置換療法群(10.7/1000人年)→調整ハザード比0.73(95%信頼区間0.60~0.88)

・ブプロピオン群(4.3/1000人年) vs ニコチン置換療法群(10.7/1000人年)→調整ハザード比0.66(95%信頼区間0.39~1.13)

 

[うつ病]

・バレニクリン群(95.9/1000人年) vs ニコチン置換療法群(163.7/1000人年)→調整ハザード比0.66(95%信頼区間0.63~0.69)

・ブプロピオン群(112.9/1000人年) vs ニコチン置換療法群(163.7/1000人年)→調整ハザード比0.75(95%信頼区間0.67~0.83)

 

[自傷行為]

・バレニクリン群(4.7/1000人年) vs ニコチン置換療法群(10.2/1000人年)→調整ハザード比0.56(95%信頼区間0.46~0.68)

・ブプロピオン群(6.1/1000人年) vs ニコチン置換療法群(10.1/1000人年)→調整ハザード比0.74(95%信頼区間0.48~1.16)

 

感想

以前はバレニクリンが自殺を増加させないとするメタ解析を読みました。
今回はニコチン置換療法と比較した観察研究ですが、バレニクリンでは心血管系・精神神経系のリスクを低下させる事が示唆されています。
 
ニコチン置換療法は心血管イベントの増加が示唆されており、またうつ病等のリスクの高い患者はバレニクリンが処方されづらい等の状況も考えられるためこの結果を以てバレニクリンは安全だと決定することは出来ませんが、まあ喫煙自体がリスクが高いので禁煙を望む人について考える際に背中を押してくれるような結果かなと思います。
 
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