【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

本当にジゴキシンで死亡リスクは高くなるのか?

「Safety and efficacy of digoxin: systematic review and meta-analysis of observational and controlled trial data」

BMJ 2015;351:h4451
 

PECO

P : RCT・観察研究の75研究。4006210人年。
E : ジゴキシン
C : プラセボ又は治療なし
O : 総死亡
 

チェック項目

・研究デザイン : メタ解析
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・評価者バイアス : 「Two investigators (OJZ and MS) independently extracted and tabulated 」の記載あり。
・出版バイアス : 「Begg’s test and Egger’s test」が行われており、「we found no evidence of publication bias」と記載されている。言語は英語に限定されている。
・元論文バイアス : RCTの他に観察研究も含まれている。
・異質性バイアス : 異質性検定が行われている。研究デザイン・研究規模・患者背景等はばらばら。
 

結果

・観察研究:調整されていない相対リスク→1.76(95%信頼区間1.57~1.97)P<0.001  異質性:I2>90%、P=0.001
 
・観察研究:調整相対リスク→1.61(95%信頼区間1.31~1.97)P<0.001、I2=65%
 
・観察研究:調整ハザード比→1.17(95%信頼区間1.07~1.29)P=0.001、I2=84%
 
・観察研究:傾向スコアマッチ後相対リスク→1.18(95%信頼区間1.09~1.26)P<0.001、I2=95%
 
・観察研究:傾向スコアマッチ後ハザード比→1.07(95%信頼区間0.96~1.19)P=0.20、I2=95%
 
・RCT:相対リスク→0.99(95%信頼区間0.93~1.05)P=0.75  異質性:I2=0、P=0.97
 
 

感想

観察研究の解析では交絡因子の調整が行われるほど死亡リスクの比率が減少し、RCTの解析では有意な差が見られていないというのは面白いですね。
死亡リスクが高い人ほどジゴキシンが処方されやすいというのは納得ですが、以前読んだメタ解析では死亡リスクの有意な上昇が示唆されていましたが観察研究やポストホック解析が含まれている事が原因だったのでしょうか?

 

 

なかなか悩ましいところですが、いずれにしろジゴキシンが処方されている場合慌てる必要はなさそうですね。
 

追記

青島周一先生から重要な指摘を頂いたのでそのまま記載させていただきます。
「この論文ではうっ血性心不全と心房細動でアウトカムが異なる可能性が示唆されています。これまでRCTサブ解析でのジゴキシン死亡リスク上昇は心房細動患者での検討でした。僕もちょっと考察しようかと考えていますが患者背景別に安全性を考慮せねばという印象です」
 
心房細動患者のみの検討では死亡リスクの上昇が示唆されており、今回のメタ解析では心房細動・心不全のどちらか又は両方を有する患者が対象になっているため疾患別でリスクを考える必要があるのかもしれませんね。
ありがとうございます!