【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

ピロリ菌の除菌を行うとどれくらい胃癌のリスクを減らせますか?

「Meta-analysis: can Helicobacter pylori eradication treatment reduce the risk for gastric cancer?」

PMID: 19620164
 

PECO

P : 7RCTに参加したピロリ菌陽性の患者、平均年齢の範囲は42~51歳(6695人)
E : ピロリ菌の除菌を行う(3388人)
C : ピロリ菌の除菌を行わない(3307人)
O : 胃癌リスクの減少
 

チェック項目

・研究デザイン : メタ解析
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・評価者バイアス : 2人の評価者が独立して評価している
・出版バイアス : 言語の制限なしに選ばれている
・元論文バイアス : 全てRCT。三重盲検が2試験、PROBEが5試験。ITT解析が行われているのは3試験。検出力不足が2試験。プラセボとの比較試験は4試験。
・異質性バイアス : 異質性は報告されなかったと記載されている
・追跡期間中央値 : 6年
 

結果

E群の除菌成功率の範囲は73~89%、C群のピロリ菌の自然消滅の範囲は5~15%
 
・胃癌の発症 : E群(1.1%) vs C群(1.7%)→相対リスク0.65(95%信頼区間0.43~0.98)、NNT=167
 

感想

見つかったのが割りと古めの論文だったため改めて新しい論文が発表されていないか調べてみる必要がありますが、ピロリ菌の除菌によって胃癌のリスクを有意に35%低下させるがNNTで見ると167人に治療を行えば1人の胃癌発症を予防できるというような結果になっており、胃癌となると場合によってはその後のQOLにも大きな影響を与えるためアウトカムとして軽視できるものではありませんが、追跡期間の中央値が6年で除菌を行わない群では胃癌の発症が1.7%というのが意外と少ないなと感じました。
何歳で除菌を行うのかというのも考える上で重要なファクターなるのかなと思います。