【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

高齢者において血圧は予後にどう影響を与える?②

ちょっとタイトルにふさわしくないかもしれませんが、今回も高齢者と血圧に関する論文を2つほど。

 
①「Randomised double-blind comparison of placebo and active drugs for effects on risks associated with blood pressure variability in the Systolic Hypertension in Europe trial.」
PMID: 25090617
 
[PECO]
P : 座位での収縮期血圧が160~219mmHg、座位での拡張期血圧が95mmH未満、立位での収縮期血圧が140mmHg以上である60歳以上の患者(4695人、欧州)
E : ニトレンジピン(10~40mg/日)及び必要に応じてジヒドロピリジン系Ca拮抗薬・エナラプリル(5~20mg/日)・ヒドロクロロチアジド(12.5~25mg/日)を追加して座位での収縮期血圧が150mmHg以下を目標に治療(2398人)
C : プラセボ(2297人)
O : 死亡・脳卒中・心筋梗塞・心不全
 
[チェック項目]
・研究デザイン : ランダム化比較試験
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か : 複数設定されている
・ランダム化されているか? : されている
・盲検化されているか? : 二重盲検が行われている
・ITT解析されているか? : 記載はないが、Figure1を見るとITT解析が行われていると思われる
・追跡率 : 97.3%
・追跡期間中央値 : 2年
・患者背景 : 年齢・性別・血圧・脈拍・BMI・血清コレステロール・喫煙・飲酒・心血管疾患既往・降圧薬は同等と記載されている。女性(66.8%)・平均年齢70.2歳・座位平均血圧173.8/85.5mmHg。
・サンプルサイズ : 平均追跡期間5年で3000人(検出力90%)※E群で脳卒中に有意差が出たため途中で中止されている。
 
[結果]
・死亡 : E群(22.3/1000人・年) vs C群(25.1/1000人・年)→相対差-11%(95%信頼区間-29~13)、P=0.34
 
・脳卒中 : E群(8.5/1000人・年) vs C群(14.0/1000人・年)→相対差-40%(95%信頼区間-57~-15)、P=0.0045、NNT=74人
 
・心不全 : E群(6.7人/1000人・年) vs C群(9.2/1000人・年)→相対差-27%(95%信頼区間-51~10)、P=0.13
 
・心筋梗塞 : E群(6.4/1000人・年) vs C群(8.4/1000人・年)→相対差-23%(95%信頼区間-50~17)、P=0.22
 
 
一次アウトカムが明確ではなく、二重盲検が途中から行われていない例も若干見られるため割り引いて考える必要があるが、脳卒中リスクの有意な低下が見られる。ただ、死亡については減少する傾向にあるが有意な差は見られていない。
読み違えてなければ一次アウトカムではないと思うが、致死性及び非致死性心不血管エンドポイントと心筋梗塞・心不全・突然死の複合エンドポイントでも有意にリスクを低下している。
 
 
 
②「Treatment With Multiple Blood Pressure Medications, Achieved Blood Pressure, and Mortality in Older Nursing Home Residents: The PARTAGE Study.」
PMID: 25685919
 
P : ナーシングホーム(介護付施設)に入所している80歳以上の患者(1127人、フランス・イタリア)
E : 降圧薬を複数服用しており、収縮期血圧が130mmHg以下
C : それ以外
O : 総死亡
 
こちらは抄録しか読めませんが、2年間追跡されている縦断研究で傾向スコアマッチングが行われています。
 
結果は、[調整後ハザード比1.78(95%信頼区間1.3~-2.37)、P<0 .001]と死亡リスクの有意な上昇がみられています。
 
 

感想

今回の論文を読んだ限りでは、薬局に来局されるような70歳の患者で収縮期血圧が160mmHg以上のような場合は血圧を下げることに有益性はあるが、一方で施設に入所しているような患者では複数の降圧薬による必要以上の降圧は避けるべきだなと思いました。