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【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

高齢者において血圧は予後にどう影響を与える?①

高齢者と血圧の関係についていくつか論文を。

①「Low Systolic Blood Pressure and Mortality From All Causes and Vascular Diseases Among Older Middle-aged Men: Korean Veterans Health Study」
PMID: 25857648

[PECO]
P : 60歳以上である韓国の退役軍人(94085人)
E : 収縮期血圧の高さ
C : 収縮期血圧110~119mmHg
O : 総死亡・血管死

[チェック項目]
・研究デザイン : コホート研究
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・調整された交絡因子は何か? : 年齢・喫煙・飲酒・身体活動・家計収入・虚血性心疾患及び脳卒中の既往(自己申告)・BMI
・平均追跡期間 : 6.2年

[結果]
収縮期血圧110~119mmHgを対照として

・90mmHg未満 : ①総死亡→ハザード比1.93(95%信頼区間1.20~3.10)P=0.006  ②血管死→ハザード比3.24(95%信頼区間1.24~8.42)P=0.02

・90~99mmHg : ①総死亡→ハザード比1.21(95%信頼区間0.83~1.75)P=0.33  ②血管死→ハザード比0.29(95%信頼区間0.04~2.14)P=0.23

・120~139mmHg : ①総死亡→ハザード比1.07(95%信頼区間0.91~1.25)P=0.41  ②血管死→ハザード比1.35(95%信頼区間0.89~2.04)P=0.15

・140~159mmHg : ①総死亡→ハザード比1.02(95%信頼区間0.87~1.20)P=0.79  ②血管死→ハザード比1.27(95%信頼区間0.83~1.92)P=0.27

・160~179mmHg : ①総死亡→ハザード比1.10(95%信頼区間0.92~1.31)P=0.30  ②血管死→ハザード比1.22(95%信頼区間0.77~1.92)P=0.40

・180mmHg以上 : ①総死亡→ハザード比1.30(95%信頼区間1.07~1.58)P=0.01  ②血管死→ハザード比1.93(95%信頼区間1.21~3.07)P=0.006

[感想]
韓国の退役軍人を観察した研究で収縮期血圧のみで検討されているため、そのまま実際の仕事に適用できるかはわかりませんが、血圧が高すぎる又は低すぎる事が死亡リスクを上昇させる事が示唆されているのは予想通りとして、収縮期血圧160~179mmHg群では死亡リスクが増加する傾向にあるものの有意な差は見られないという意外な結果でした。


②「The correlation between blood pressure and kidney function decline in older people: a registry-based cohort study.」
PMID: 26129635

[PECO]
P : ベルギーにおける60歳以上の患者(8636人)
E : 収縮期血圧・拡張期血圧・脈圧の変化あり
C : 変化なし
O : 急速な腎機能の低下(3mL/分/1.73m2/年以上)

[チェック項目]
・研究デザイン : 後ろ向きコホート研究
・真のアウトカムか? : 検査値を検討している研究だが、代用のアウトカムとしても重要なものであると考える
・調整された交絡因子は? : 性別、年齢、ベースライン時のCCI・CV既往・eGFR
・追跡期間 : 10年

[結果]
〇収縮期血圧
・ベースライン時の収縮期血圧
①60~69歳→140mmHg以上で調整後オッズ比2.4(95%信頼区間1.5~3.9)
②70~79歳→150mmHg以上で調整後オッズ比1.5(95%信頼区間1.0~2.4)
②80歳以上→ベースライン時の収縮期血圧と腎機能の低下に相関関係は見られない

・収縮期血圧の変化(年間1mmHgの減少)
①60~69歳→調整後オッズ比3.1(95%信頼区間2.0~4.6)
②70~79歳→調整後オッズ比1.9(95%信頼区間1.3~2.7)
③80歳以上→調整後オッズ比9.2(95%信頼区間1.8~46)

〇拡張期血圧
・ベースライン時の拡張期血圧
①60~69歳→90mmHg以上で調整後オッズ比2.0(95信頼区間0.99~4.0)
②70~79歳→相関関係は見られない
③80歳以上→相関関係は見られない

・拡張期血圧の変化(年間1mmHgの減少)
①60~69歳→調整後オッズ比2.2(95%信頼区間1.7~2.9)
②70~79歳→調整後オッズ比1.4(95%信頼区間1.1~1.9)
③80歳以上→調整後オッズ比1.5(95%信頼区間0.99~2.4)

〇脈圧
・ベースライン時の脈圧
①60~69歳→60mmHg以上で調整後オッズ比1.5(95%信頼区間1.0~2.2)
②70~79歳→70mmHg以上で調整後オッズ比1.4(95%信頼区間1.1~2.0)
③80歳以上→相関関係は見られない

・脈圧の変化(年間1mmHgの減少)
①60~69歳→調整後オッズ比2.8(95%信頼区間1.6~4.9)
②70~79歳→調整後オッズ比1.3(95%信頼区間1.1~1.5)
③80歳以上→調整後オッズ比1.7(95%信頼区間1.1~2.8)

[感想]
個人的になんか読みづらい論文でした。
血圧を下げた場合ではなく、経年的な変化を検討した後ろ向きコホート研究ですが、結果としては血圧の低下は腎機能低下の危険因子であることが示されています。
ベースライン時の血圧が79歳以下では血圧高めなほど腎機能低下のリスクが高いが、80歳以上では血圧が高くてもリスクの上昇が見られていないのが印象的でした。


ひとまず今回はここまでにして、血圧に対する介入を検討した論文はまた後日にしたいと思います。
2つの論文を読んだ限りでは高齢者、特に80歳以上の方では血圧に対する介入が意義があるものなのか慎重に考えなければいけないなと感じました。


ついでに最近暑いので参考までに気温と血圧の変動について検討されているパイロットスタディを。

「Effect of a brief heat exposure on blood pressure and physical performance of older women living in the community-a pilot-study.」
PMID: 25489997

[PECO]
P : 70歳以上の女性
E : 30℃の部屋に60分
C : 20℃の部屋に60分
O : 収縮期血圧・拡張期血圧・心拍数

[結果]
・収縮期血圧→20℃群143.5mmHg(IQR135.3~158.5)・30℃群133.5mmHg(IQR121.5~140.0)、P<0.001
・拡張期血圧→20℃群88.0mmHg(IQR80.0~93.5)・30℃群80.0mmHg(IQR72.3~91.0 )、P<0.001
・心拍数→20℃群65bpm(IQR61~68)・30℃群68bpm(IQR64~77 )、P=0.016

収縮期血圧が10mmHg、拡張期血圧が8mmHg低下するという結果。