【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

低炭水化物ダイエットは他のダイエット法と比較して減量に対して効果的か?

今回は低炭水化物ダイエットと他のダイエット法とを比較した論文を幾つか読んでみたいと思います。

 

①「Effects of low-carbohydrate vs low-fat diets on weight loss and cardiovascular risk factors: a meta-analysis of randomized controlled trials.」

PMID: 16476868
 
P : 5つの研究に参加した447人
E : 低炭水化物ダイエット(炭水化物の摂取が60g/日以下)
C : 低脂肪ダイエット(脂質の摂取が1日に摂取する総エネルギーのうち30%以下)
O : 6ヶ月後及び12ヶ月後の体重の減少
T : メタ解析
 
RCTのメタ解析で、2人の研究者が独立して評価しており、個々の専門家や研究者に連絡が取られています。 
 
[結果]
・6ヶ月後
体重減少の平均の差は低炭水化物ダイエット群で-3.3kg(95%信頼区間-5.3kg~1.4kg)※異質性 : P=0.02、I2=65%
・12ヶ月後
同じく体重減少の平均の差は低炭水化物ダイエット群で-1.0kg(95%信頼区間-3.5kg~1.5kg)※異質性 : P=0.15、P=48%
 
6ヶ月までは低炭水化物ダイエット群の方が有意に大きく体重を減少させるが、12ヶ月後になると有意な差が見られていない。
 
 
 
次は2型糖尿病患者について検討した研究を。
 
②「Weight loss, glycemic control, and cardiovascular disease risk factors in response to differential diet composition in a weight loss program in type 2 diabetes: a randomized controlled trial.」
PMID: 24760261
 
P : 18歳以上で過体重又は肥満の2型糖尿病患者(米国、277人)
E・C : 高炭水化物低脂肪ダイエット(74人)・低炭水化物高脂肪ダイエット(77人)・通常のケア(76人)
O : 6ヶ月後及び12ヶ月後の体重変化
T : ランダム化比較試験
※通常のケア→体重減少に関するカウンセリングを行い、一月毎に面談を行う
 
検化は行われておらず、ITT解析は行われており、脱落者は10%。ベースライン時の平均体重は105.5kg。
 
[結果]
・低脂肪群の体重変化
①6ヶ月後 : -8.6%(95%信頼区間-7.2%~-10.0%)
②12ヶ月後 : -7.4%(95%信頼区間-5.7%~–9.2%)
 
・低炭水化物群の体重変化
①6ヶ月後 : -10.4%(95%信頼区間-8.9%~-12.0%)
②12ヶ月後 : -9.0%(95%信頼区間-7.1%~–10.9%)
 
・通常ケア群の体重変化
①6ヶ月後 : -2.3%(95%信頼区間-1.3%~–3.2%)
②12ヶ月後 : -2.5%(95%信頼区間-1.3%~–3.8%)
 
こちらでは12ヶ月後でも低炭水化物群の方が体重の減少が大きいですが、低炭水化物群・低脂肪群で6ヶ月時点の体重よりも12ヶ月時点の体重の方が増えている点が気になります。
 
ちなみに薬物治療の変化についても記載されており、インスリンの中止は[低脂肪群:19人のうち12人、低炭水化物群:10人のうち9人、通常ケア群:12人のうち1人]、経口血糖降下の中止は[低脂肪:62人のうち24人、低炭水化物群:69人のうち22人、通常ケア群:62人のうち10人]という結果になっています。
 
 
③「Comparison of weight loss among named diet programs in overweight and obese adults: a meta-analysis.」
PMID: 25182101
 
P : 48のRCTに参加した過体重又は肥満の7268人(年齢中央値45.7歳・体重中央値94.kg・BMI中央値33.7)
E : 低炭水化物ダイエット・低脂肪ダイエット・多量栄養素を適度に摂取するダイエット・食習慣の他に生活習慣や運動についても改善させるダイエット(LEARN法)
C : ダイエットなし又は他のダイエット法
O : 6ヶ月後及び12ヶ月後の体重減少
T : ランダム化比較試験
 
2人のレビュアーが独立して評価しており、出版バイアスについてはFunnel Plotを用いて検討されており(非対称性)、解析されているRCTのうち29試験ではバイアスのリスクが低く19試験でバイアスのリスクが高いと記載されています。
 
[結果]
〇ダイエットなしとの比較
①低炭水化物ダイエット群→6ヶ月後 : -8.73kg(95%信頼区間-7.27kg~-10.20kg)、12ヶ月後 : -7.25kg(95%信頼区間-5.33kg~-9.25kg)
②低脂肪ダイエット群→6ヶ月後 : -7.99kg(95%信頼区間-6.01kg~9.92kg)、12ヶ月後 : -7.27kg(95%信頼区間-5.26kg~-9.34kg)
③多量栄養素ダイエット群→6ヶ月後 : -6.78kg(95%信頼区間-5.50kg~-8.05kg)、12ヶ月後 : -5.70kg(95%信頼区間-4.14kg~-7.35kg)
④LEARN法群→6ヶ月後 : -6.07kg(95%信頼区間-4.23kg~-7.84kg)、12ヶ月後 : -5.16kg(95%信頼区間-2.68kg~-7.63kg)
 
〇低炭水化物ダイエットと低脂肪ダイエットの比較→有意差はみられない
 
〇有害事象
・便秘→低炭水化物群(68%)vs低脂肪群(35%) : P<0.001
・頭痛→低炭水化物群(60%)vs低脂肪群(40%) : P<0.03
・口臭→低炭水化物群(38%)vs低脂肪群(8%) : P<0.001
・筋肉痛→低炭水化物群(35%)vs低脂肪群(7%) : P<0.001
・下痢→低炭水化物群(23%)vs低脂肪群(7%) : P<0.02
・脱力感→低炭水化物群(25%)vs低脂肪群(8%) : P<0.01
・発疹→低炭水化物群(13%)vs低脂肪群(0%) : P<0.006
 
このメタ解析でも12ヶ月時点では6ヶ月時点と比べて体重が減少しているという事はなく、重篤なものではないものの低炭水化物ダイエット群で有害事象が多い点が気になります。
ただ、出版バイアス及び元論文バイアスの影響を排除しきれないため結果については割り引いて考える必要があるかもしれません。
 

感想

・3つの論文を読んだ限りでは、短期間では低炭水化物ダイエットは効果的ではあるが12ヶ月継続しても持続した減量効果は見られず、低脂肪ダイエットと比べて明確な差は見られないように感じます。
「本格的な夏が来るまでにどうしても痩せたい!」というような場合は他のダイエット法と比べて減量に対する効果はわずかながらもあるかもしれませんが、前回の記事でも書いたように死亡リスクの増加が示唆されており、その他のQOLに関連するような有害事象リスクも高いため、少なくとも長期間に及ぶようなダイエットには向いていないように思います。
 
・肥満の2型糖尿病患者で薬を減らしたい又は止めたい場合は低炭水化物ダイエット・低脂肪ダイエットは共に効果的かもしれません。
その際にHbA1cは下がったけど死んでしまったのでは元も子もないのでどの程度の制限を行うべきなのかはまた改めて調べてみたいとおもいます。
 
 
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