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【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

多面的な介入で認知機能低下の予防ができるか?

今回はご依頼があった論文を。

「A 2 year multidomain intervention of diet, exercise, cognitive training, and vascular risk monitoring versus control to prevent cognitive decline in at-risk elderly people (FINGER): a randomised controlled trial」
PMID: 25771249

PECO

P : CAIDE Dementia Risk Scoreが6点以上で、30単語(10単語を3回)のうち記憶出来た単語が19単語以下及び思い出せた単語が75%以下又はMMSEが26点以下のうち1つ以上に該当する、平均よりもわずかに認知機能が低いと思われる60~77歳(1260人、フィンランド)
※認知症と診断されている、又は認知症が疑われる場合は除外
E : 厳格で多面的(食事・運動・認知トレーニング・血管リスクの検査)な介入(631人)
C : 健康への標準的なアドバイス(629人)
O : 神経心理学的検査バッテリー(NTB)により測定した認知機能の変化(14のテストにより判定)

※CAIDE(Cardiovascular Risk Factors, Aging and Dementia) Dementia Risk Score→年齢・性別・教育・収縮期血圧・BMI・総コレステロール・身体活動により判定。範囲は0~15点。


どのような介入が行われたのか、ちょっと衝撃的だったので書いておきます。

[食事]
1日に摂取するエネルギーのうち10~20%をタンパク質から、25~35%を脂質から、45~55%を炭水化物から摂取。食物繊維25~35g/日、食塩5g/日未満、アルコールは1日に摂取するエネルギーのうち5%未満。5~10%の体重減少を目標にする。
[運動]
週1~3回のジムでの筋力トレーニングと週2~5回のエアロビクスによるエクササイズを行う。
[認知トレーニング]
心理学者による認知機能に対する教育が行われ、週3回(1回10~15分)自宅又は研究施設でのコンピューターを用いたトレーニングを行う。
[血管リスクの検査]
3・9・18ヶ月目に看護士と面談、3・9・12ヶ月目に医師と面談し、血圧・体重・BMI・腰囲・胸囲の測定と生活習慣に対する指導を行う。

チェック項目

・研究デザイン : ランダム化比較試験
・真のアウトカムか? : 代用のアウトカムであると考えるが今回は興味深い内容であるため読むのを続ける
・一次アウトカムは明確か? : 明確であると思われる
・ランダム化が行われているか? : 行われている
・盲検化が行われているか? : 三重盲検が行われている
・解析方法は? : 修正されたITT解析が行われている
・追跡率 : 94%
・追跡期間 : 2年
・患者背景 : 特に気になるような偏りは見られない
・サンプルサイズ : 各群500人(検出力90%)

結果

[一次アウトカム]
・NTB総Zスコアの推定平均変化値はE群0.20(SE0.01、SD0.51)・C群0.16(SE0.01、SD0.51)
・1年間でのNTB総スコア差は0.022(95%信頼区間0.002~0.042)P=0.030
・NTB総スコアに対するオッズ比はE群と比較してC群では1.31(95%信頼区間1.01~1.71)P=0.04

[有害事象]
・全ての有害事象 : E群46人(7%)  C群6人(1%)
・筋肉痛 : E群32人(5%)  C群0人(0%)
・ストレス : E群6人(1%)  C群2人(<1%)
・死亡 : E群5人(1%)  C群5人(1%)

感想

厳格で多面的な介入が認知機能に対するスコアの改善と関連することが示された。
ただ、このスコアの改善がどれだけ実際の生活に影響を与えるのかは正直なところよくわからない。

私自身、週に2回程ジムに通っており、食事の制限についてもあまり苦もなく出来るとは思いますが、それでもこの研究のプロトコルを遵守した生活を続けるというのはかなり難しい事ではないかなと感じます(と言いつつ脱落者はE群で14%とそんなに多くもないようですが)。
下手をすると、大げさかもしれませんが認知機能低下の予防のために毎日を過ごすというようなことにもなりかねませんが、それでも「認知症の予防のために頑張りたい!」という人も勿論いるのではないかと思います、ですが実際に認知症の発症に与える影響はごくわずかかもしれません。だからダメというわけでもありませんが。

ちなみに、今後も少なくとも7年目までは追跡が続けられるようなのでそちらの結果も首を長くして待ちたいと思います。