【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

糖尿病に対するスクリーニングを行う事で長生きできるのか?

今日は「薬剤師必読」という言葉と共に紹介されていた論文を目にしてしまいました。「必読」と言われたからには読んでみなければなりません。

 
という事でこちらです。
「Screening for type 2 diabetes and population mortality over 10 years (ADDITION-Cambridge): a cluster-randomised controlled trial」
PMID: 23040422
 
 
・研究デザイン : クラスターランダム化比較試験
 

PECO

P : 年齢・性別・BMI・ステロイドが処方されている・降圧薬が処方されている等の条件から、糖尿病リスクの高い40〜69歳の患者。(英国33施設、20184人)
E : 糖尿病のスクリーニング及び多因子に対する強化治療又は糖尿病のスクリーニング及びガイドラインに基づいた標準治療を行う(16047人)
C : 糖尿病のスクリーニングを行わない(4137人)
O : 総死亡
 

※強化治療→HbA1c<7.0%・血圧≦135/85mmHg・コレステロールIHD-<5.0mmol/L・コレステロールIHD+<4.5mmol/L

チェック項目

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・ランダム化が行われているか? : 施設ごとにランダム化が行われている
・盲検化が行われているか? : PROBEが行われている
・解析方法は? : ITS解析が行われている
・追跡率 : E群73%、C群100%
・追跡期間中央値 : 9.6年
・患者背景 : 特に気になるような偏りは見られない、年齢中央値59歳
 

結果

・総死亡 : E群(9.5%) vs C群(9.1%)→ハザード比1·06(95%信頼区間0.90–1.25)
 
 
また、副次評価項目である心血管死・癌死・その他の死亡でも全て有意な差はみられない。
 

感想

E群での脱落者の多さが結果に影響を与えている可能性もありますが、スクリーニングが死亡を減らさないという結果は糖尿病に対する早期発見・早期治療がどれほど意義があるものなのか考えさせられます。
 
少なくともその後のケアについてどう取り組んでいくのかをしっかり考えなければ保険薬局における血糖値測定等は、ただコストがかかるだけ、不安にさせるだけ、「糖尿病」である期間を長くさせるだけという可能性があるかもしれないということを考えなければいけないと感じました。