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【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

ステント留置後。もう1剤抗血小板薬を追加すべき?〜case1

抗血小板薬
今回はなんと、ありがたいことに臨床疑問を頂いたのでその疑問に関連する論文を検索して読んでみたいと思います。

まずは疑問の定式化を
P : 狭心症の既往があり、ステント留置術を受けた患者。アスピリン服用中。70代。
E : 抗血小板薬を追加
C : 抗血小板薬の追加なし
O : ステント血栓症又は心・脳血管イベント

ステント留置後の患者では6~12ヶ月のDAPT(2剤抗血小板療法)の実施が推奨されておりますが、いつステント留置が行われたのかは今のところ分かりません。
では関連しそうな論文を読んでみましょう。

「Twelve or 30 Months of Dual Antiplatelet Therapy after Drug-Eluting Stents」
PMID: 25399658


・研究デザイン : 非劣性試験

  • PECO
P : 18歳以上の薬剤溶出性ステント又はベアメタルステントの留置術を行った後、12ヶ月間DAPT(アスピリン+チエノピリジン系薬)の投与を行った患者。(9961人)
E : アスピリン+チエノピリジン系薬(5020人)
C : アスピリン+プラセボ(4941人)
O : 有効性→ステント血栓症、主要心・脳血管イベント(死亡・心筋梗塞・脳卒中)
安全性→中等度又は重度の出血(GUSTO基準)

※薬剤溶出性ステントで使用されている薬剤→シロリムス・ゾタロリムス・パクリタキセル・エバロリムス

どうやら1年以上のDAPTを行った場合の影響を検討した試験のようです。

  • チェック項目
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 複数設定されている
・ランダム化されているか? : されている
・盲検化されているか? : されていない
・解析方法は? : ITT解析のみ
・追跡率 : 94.3%
・追跡期間 : 33ヶ月
・患者背景 : 特に気になるような偏りは見られない
・サンプルサイズ : 有効性→12196人(検出力85%以上)、安全性→9960人(検出力80%)

  • 結果
①有効性
・ステント血栓症
チエノピリジン系薬併用群(0.4%) vs プラセボ併用群(1.4%)→ハザード比0.29(95%信頼区間0.17–0.48)、P<0.001、NNT=100人

・主要心・脳血管イベント
チエノピリジン系薬併用群(4.3%) vs プラセボ併用群(5.9%)→ハザード比0.71(95%信頼区間0.59–0.85)、P<0.001、NNT=63人

ちなみに、複合エンドポイントの各要素は

・死亡
チエノピリジン系薬併用群(2.0%) vs プラセボ併用群(1.5%)→ハザード比1.36(95%信頼区間1.00–1.85)、P=0.05

・心筋梗塞
チエノピリジン系薬併用群(2.1%) vs プラセボ併用群(4.1%)→ハザード比0.47(95%信頼区間0.37–0.61)、P<0.001

・脳卒中
チエノピリジン系薬併用群(0.8%) vs プラセボ併用群(0.9%)→ハザード比0.80(95%信頼区間0.51–1.25)、P=0.32

②安全性
非劣性マージン : 0.8%
チエノピリジン系薬併用群(2.5%) vs プラセボ併用群(1.6%)→リスク差1.0(95%信頼区間0.4―1.5)、P<0.001
ハザード比1.61(95%信頼区間1.21―2.16)、P = 0.001、NNH=112人


以上のような結果になっておりますが、12~30ヶ月のDAPT施行はプラセボと比較して安全性では劣り、ステント血栓症及び主要心・脳血管イベントのリスクは有意に減少させていますが、プラセボとの比較で盲検化は行われておらず、サンプルサイズも十分ではないためかなり割り引いて考える必要があるのではないかと思います。
更に、死亡のリスクが上昇することが示唆されていることにも気を付けたいです。


ちなみに、DAPTの実施6ヶ月以内とそれ以上の期間で検討したメタ分析もありました。
「Extended duration dual antiplatelet therapy and mortality: a systematic review and meta-analysis.」
PMID: 25467565

こちらは抄録しか読めませんが、6ヶ月までの実施とそれ以降の実施では総死亡・心血管死・非心血管死で有意な差は見られなかったようです。


初めの疑問に戻って考えると、他の論文も読んでみる事が大事ですがひとまず上記の論文を読んだ限りでは、今までアスピリンのみの治療を行っていたのであれば少なくともステント留置を行ってから12ヶ月以上経っているのであれば更に抗血小板薬を追加する必要はないのではないかと感じます。
ステント留置からどれくらいの期間が経っているのかがわからないことには始まりませんね。

また、心房細動を有する場合や脳梗塞の既往がある場合、出血リスクが高い場合、ステントの種類でも結果は変わってくるかもしれませんし、薬が追加になる際の患者さんの気持ちなんかも考えなければなりません。
実際に患者さんとのコミュニケーションを行っていかなければわからないことも多いのですが、とりあえずはここまでにして、もしよろしければコメント欄を開放しているので「自分ならこう考える」というようなご意見や治療に対する知見等なんでも構いませんのでコメントしていただけると嬉しいです。
是非一緒に考えていきましょう!きっと楽しいはずです!


臨床上の疑問があり悩んでいる方がいましたらそちらの方もコメント欄に書いてみて下さい。
ただし、疑問を解決するというようなものではなく、疑問に対してどう考えていくのかを一緒に模索するという形で行っていくので宜しくお願い致します。