【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

抗うつ薬の種類によって自殺のリスクは変わるか?

「Antidepressant use and risk of suicide and attempted suicide or self harm in people aged 20 to 64: cohort study using a primary care database」
PMID: 25693810 


・研究デザイン :コホート研究

PECO

P : うつ病と診断された20~60歳の患者(238963人)
E : 三環系抗うつ薬又はその他の抗うつ薬(主にミルタザピン・ベンラファキシル)
C : SSRI
O : 自殺・自殺企図・自傷行為

※統合失調症・層極性障害・その他の精神病・リチウム又は抗躁病薬の処方ありの場合は除外

チェック項目

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 複数設定されているが、自殺関連事象というところで明確と言える
自殺企図はソフトエンドポイントだと思うが、医療記録による確認ということで独立して行われている
・交絡因子の調整 : 年齢・性別・うつ病と診断されてからの時間・うつ病の度合い・貧困・喫煙・飲酒・民族・冠動脈疾患・糖尿病・血圧・癌・てんかん・甲状腺機能低下症・変形性関節症・喘息・慢性閉塞性気道疾患・脳卒中・一過性虚血発作・リウマチ・骨粗鬆症・肝疾患・腎疾患・強迫性障害・併用薬について調整
・追跡期間中央値 : 5.2年

結果

・自殺
①三環系抗うつ薬 vs SSRI→調整ハザード比0.84(95%信頼区間0.47-1.50)P=0.6
②その他の抗うつ薬 vs ssri→調整ハザード比2.64(95%信頼区間1.74-3.99)P<0.001
③抗うつ薬併用 vs SSRI→調整ハザード比1.36(95%信頼区間0.32-5.68)P=0.7
④抗うつ薬使用なし vs SSRI→調整ハザード比0.39(95%信頼区間0.28-0.55)P<0.001

・自殺企図又は自傷行為
①三環系抗うつ薬 vs SSRI→調整ハザード比0.96(95%信頼区間0.87-1.08)P=0.5
②その他の抗うつ薬 vs SSRI→調整ハザード比1.80(95%信頼区間1.61-2.00)P<0.001
③抗うつ薬併用 vs SSRI→調整ハザード比2.00(95%信頼区間1.54-2.59)P<0.001
④抗うつ薬使用なし vs SSRI→調整ハザード比0.36(95%信頼区間0.34-0.39)P<0.001

感想

SSRIと比較すると三環系抗うつ薬では有意差はないが、ミルタザピンやベンラファキシル等では自殺関連事象が有意に増加している。抗うつ薬の使用そのものが自殺関連事象を増加させることが示唆されている。