【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

血清総コレステロール値が低いと癌になる?

以前読んだ論文で、

 

 総コレステロール低値で男性の癌による死亡が増加する傾向にあったのが気になったので、関連しそうな論文を読んでみます。

 

「Serum cholesterol levels in relation to the incidence of cancer: The JPHC study cohorts」

PMID: 19544528

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19544528?dopt=Abstract

 

・研究デザイン : コホート研究

 

PECO

P : 40~69歳の日本人(33368人)
E : ①血清総コレステロール値<160mg/dL ②160~179mg/dL
③200~219mg/dL ④220~239mg/dL ⑤≧240mg/dL
C : ⑥180~199mg/dL
O : 癌・冠動脈疾患
 

チェック項目

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・調整した因子は明確か? : 年齢・地域・BMI・喫煙・飲酒・血圧・異常耐糖能・高コレステロール血症の治療を受けているか・野菜の摂取量・コーヒーの摂取
・追跡期間 : 平均12.4年
 

結果

⑥血清総コレステロール値180~199mg/dLが対照
 
全ての癌の発生 ハザード比(95%信頼区間)
・男性
①<160mg/dL→1.20 (1.02-1.41)
②160~179mg/dL→0.94 (0.80-1.10)
③200~219mg/dL→0.95 (0.81-1.11)
④220~239mg/dL→0.86 (0.71-1.04)
⑤≧240mg/dL→0.92 (0.74-1.14)
・女性
①<160mg/dL→ 1.07(0.85-1.35)
②160~179mg/dL→0.89 (0.74-1.08)
③200~219mg/dL→0.99 (0.84-1.17)
④220~239mg/dL→0.95 (0.80-1.13)
⑤≧240mg/dL→1.00 (0.84-1.20)
 
冠動脈疾患の発生 ハザード比(95%信頼区間)
・男性
①<160mg/dL→1.12 (0.60-2.08)
②160~179mg/dL→0.89 (0.48-1.16)
③200~219mg/dL→1.64 (0.97-2.78)
④220~239mg/dL→1.54 (0.86-2.76)
⑤≧240mg/dL→2.20 (1.24-3.92)
・女性
①<160mg/dL→0.88 (0.19-4.18)
②160~179mg/dL→1.48 (0.54-4.11)
③200~219mg/dL→2.34 (1.03-5.30)
④220~239mg/dL→1.71 (0.71-4.16)
⑤≧240mg/dL→2.12 (0.89-5.03)
 

感想

やはり男性では総コレステロール値が低値で癌の発生リスクが高くなる傾向にあるようです。女性では若干高くなる傾向にあるものの有意差はなし。
癌を部位別にみると、肝癌では総コレステロール値<160mg/dLで男性ではハザード比2.62(95%信頼区間1.44-4.76)、女性ではハザード比4.15(95%信頼区間1.70-10.15)と他の部位と比べて群を抜いて高い傾向にあるようです。
 

教訓

JJCLIPの青島先生からありがたいお言葉をいただいたので紹介させていただきます。

「ひとつの観察研究から得られる示唆は、ガンになりやすいような人はコレステロールが低い、とも考えられてしまうあたりに解釈の限界があるんですよね。コレステロールが低いことがガンの発症要因なのか、複数の研究を横断的に見ていかなくてはなりませんね! 」

とのことで、そうですよね、ありがとうございます!