薬としての音楽とは?①
【私的背景】
超絶人気ブロガーである、るるーちゅ先生からMedscapeの記事のまとめを振られたんですが、全文訳すのは骨が折れるので、今回は気になった項目を紹介していきたいと思います。
元記事→ http://www.medscape.com/slideshow/music-as-medicine-6009039
記事のタイトルは「Music as Medicine」ということで、まあ音楽の効果についての記事のようです。
それでは行ってみましょう。
『音楽が血圧を下げる』
ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を30分間聴くことで、収縮期/拡張期血圧を有意に低下させたとする研究があるようです。(元の論文は見つからず)
メタ解析でも、音楽が血圧を低下させることが示唆されております。
その他にも、音楽と血圧低下について検討されている研究は割と多くあるようですが、そのほとんどはクラシック音楽について検討されているようです。
間違っても、頭をガンガン振るようなメタルではいけません、逆効果です。
『音楽が認知症患者の興奮を改善』
高齢者施設に入居している認知症患者を対象としたランダム化比較試験において、音楽療法が興奮症状を改善させることが示されております。
Individual music therapy for agitation in dementia: an exploratory randomized controlled trial
他にもBPSDに対する音楽の効果が検討されている研究がいくつかあるようなので、探して読んでみると案外役に立つかもしれません。
本試験では、音楽療法についてトレーニングを受けている臨床医が介入を行っているようですが、対象患者はさぞかし心が安らぐような音楽を提供されたのではないかと思います。
やはり間違ってもメタルではいけません、間違いなく興奮を増長させます。逆効果です。
『音楽が不眠を改善させる』
高齢者を対象としたある研究では、3ヶ月以上毎晩ゆっくりとした落ち着いた音楽を聴くことで睡眠の状態を改善させ、日中の機能も改善させることが示されているようです。(元論文については見つからず)
その他にも、音楽が睡眠の質を改善させることが示されてるメタ解析をいくつか見つけました。
Music-assisted relaxation to improve sleep quality: meta-analysis. - PubMed - NCBI
Music for insomnia in adults. - PubMed - NCBI
この辺りも詳しく調べてみれば、不眠に悩んでいる患者や、眠剤を続けることに不安を抱えている患者などでは、非常に役に立つかもしれません。
しかし、しつこいようですが、やはりメタルではいけません。余計に寝られなくなります。逆効果です。
ということで、なんとなく高齢者こそ音楽が必要であるような印象を受けました。
また次回に続きたいと思います。
急性下気道感染症へのプレドニゾロン/CKD患者への降圧治療
【私的背景】
今回は、抄録しか読めないけど気になった論文を。
①「Effect of Oral Prednisolone on Symptom Duration and Severity in Nonasthmatic Adults With Acute Lower Respiratory Tract Infection: A Randomized Clinical Trial.」
PMID: 28829884
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28829884
【PECO】
P : 抗菌薬による治療の必要がない、急性の咳および1つ以上の下気道感染症状を有する、過去5年以内に慢性肺疾患の既往または喘息治療薬の使用がない成人(英国、401例、平均年齢 47歳、女性 63%、喫煙者 17%、痰 77%、息切れ 70%、喘鳴 47%、胸痛 46%、ピークフロー異常 42%)
E : プレドニゾロン 20mg×2錠/日を5日間投与(199例)
C : プラセボを5日間投与(202例)
O : 中等度の咳の持続期間(臨床的に意味のある差は3.79日)、2~4日目の症状の重症度の平均(臨床的に身のある差は1.66点)
【チェック項目】
・研究デザイン : ランダム化比較試験
・真のアウトカムか? : 真のアウトカムと言える
・ランダム化されているか? : されている
・一次アウトカムは明確か? : 抄録を読む限りでは設定されているのは2つであり、明確と言える
【結果】
・咳の期間(中央値)
E群:5日(IQR 3~8日) vs C群:5日(IQR 3~10日)→調整ハザード比 1.11(95%信頼区間 0.89~1.39)P=0.36
・症状の重症度(平均値)
E群(1.99点) vs C群(2.16点)→調整平均差-0.20(95%信頼区間 -0.40~0.00)P=0.05
・重篤な有害事象は見られなかった
【コメント】
慢性肺疾患や喘息のない急性下気道感染症の患者に対するプレドニゾロンの使用は、臨床的に意味のある有益性は示されず、本試験では有害事象について差は見られていないようだが、有益性よりも害の方が上回る可能性がある。
②「Association Between More Intensive vs Less Intensive Blood Pressure Lowering and Risk of Mortality in Chronic Kidney Disease Stages 3 to 5
A Systematic Review and Meta-analysis」
JAMA Intern Med. Published online September 5, 2017. doi:10.1001/jamainternmed.2017.4377
http://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2652833
【PECO】
P : 18歳以上でステージ3~5(eGFR<60ml/分/1.73㎡)のCKD患者(ベースライン時の平均収縮期血圧 148mmHg)
E : 積極的または厳格な降圧治療
C : プラセボや治療なしまたは厳格ではない降圧治療
O : 総死亡
【チェック項目】
・研究デザイン : ランダム化比較試験のシステマティックレビュー&メタ解析
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・評価者バイアス : 「 Two of us independently evaluated study quality and extracted 」の記載あり
【結果】
厳格な降圧治療(16mmHg低下し132mmHg) vs 厳格ではない降圧治療(8mmHg低下し140mmHg)→オッズ比 0.86(95%信頼区間 0.76~0.97)P=0.01 ※異質性は見られなかった
【感想】
これまでに読んだ論文の結果とは異なり、CKD患者についてはやや厳しめの血圧管理を行った方が総死亡についてはリスクを下げる(死亡を延長する)ことが示唆されている。
この研究のみでは具体的にどの程度の管理を行えば良いのかは明確ではないため、今後も追っていきたい。
少なくとも、収縮期血圧 140mmHg以下は目指したいところ。
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