【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

インクレチン関連薬はどれくらい効果や副作用がありますか?

【私的背景】

最近、疲れ果てておりましてPECOをたてる余裕もなく、ブログの更新も滞っておりますが、頑張って論文を読んでいきたいと思います。論文読まないと不安になるね。

 

 

「Incretin-based agents in type 2 diabetic patients at cardiovascular risk: compare the effect of GLP-1 agonists and DPP-4 inhibitors on cardiovascular and pancreatic outcomes.」

PMID:28249585

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28249585

 

PECO

: 6つのランダム化比較試験に参加した2型糖尿病患者(55248例)

: インクレチン関連薬(DPP-4阻害薬またはGLP-1受容体作動薬)の使用

: プラセボの使用

: 総死亡、心血管死亡、主要心血管イベント、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による入院、急性膵炎、膵癌、全ての低血糖、重度の低血糖

 

チェック項目

・研究デザイン : メタ解析

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

・一次アウトカムは明確か? : 複数設定されているため注意

・評価者バイアス : 「Relevant data for analysis were extracted independently by two authors (ZZ and XC) using a standardized format. 」と記載されている。

・出版バイアス : 「Visual inspection of funnel plots asymmetry revealed no evidence of substantial publication bias for any outcome we studied, which was further confirmed by Begg’s and Egger’s tests」と記載されている。英語の論文のみ検索されている。

・元論文バイアス : 本文中に記載は見当たらないが、ランダム化比較試験を読んだ限りでは、内的妥当性に問題はないように思う。

・異質性バイアス : フォレストプロットの方向性は一致していないように思われる。

・追跡期間 : 平均2.6年間

 

結果

【総死亡】

・インクレチン関連薬→リスク比 0.97(95%信頼区間 0.89~1.06) 異質性:P=0.097、I2=46.4%

・DPP-4阻害薬→リスク比 1.02(95%信頼区間 0.91~1.13) 

・GLP-1受容体作動薬→リスク比 0.90(95%信頼区間 0.82~0.98)

【心血管死亡】

・インクレチン関連薬→リスク比 0.96(95%信頼区間 0.86~1.07) 異質性:P=0.187、I2=33.3%

・DPP-4阻害薬→リスク比 1.03(95%信頼区間 0.93~1.14)

・GLP-1受容体作動薬→リスク比 0.84(95%信頼区間 0.73~0.97)

【主要心血管イベント】

・インクレチン関連薬→リスク比 0.95(95%信頼区間 0.88~1.01) 異質性:P=0.102、I2=45.6%

・DPP-4阻害薬→リスク比 0.99(95%信頼区間 0.93~1.05)

・GLP-1受容体作動薬→リスク比 0.89(95%信頼区間 0.77~1.04)

【非致死的心筋梗塞】

・インクレチン関連薬→リスク比 0.96(95%信頼区間 0.89~1.03)

・DPP-4阻害薬→リスク比 0.99(95%信頼区間 0.89~1.09)

・GLP-1受容体作動薬→リスク比 0.92(95%信頼区間 0.79~1.08)

【非致死的脳卒中】

・インクレチン関連薬→リスク比 0.95(95%信頼区間 0.84~1.08) 異質性:P=0.290、I2=19.0%

・DPP-4阻害薬→リスク比 1.00(95%信頼区間 0.86~1.16)

・GLP-1受容体作動薬→リスク比 0.89(95%信頼区間 0.68~1.16)

【心不全による入院】

・インクレチン関連薬→リスク比 1.03(95%信頼区間 0.91~1.16) 異質性:P=0.547、I2=0.0%

・DPP-4阻害薬→リスク比 1.11(95%信頼区間 0.95~1.30)

・GLP-1受容体作動薬→リスク比 0.93(95%信頼区間 0.81~1.16)

【急性膵炎】

・インクレチン関連薬→リスク比 1.16(95%信頼区間 0.85~1.59) 異質性:P=0.188、I2=33.1%

・DPP-4阻害薬→リスク比 1.76(95%信頼区間 1.14~2.72)

・GLP-1受容体作動薬→リスク比 0.75(95%信頼区間 0.47~1.17)

【膵癌】

・インクレチン関連薬→リスク比 0.71(95%信頼区間0.45~1.11) 異質性:P=0.038、I2=60.5%

・DPP-4阻害薬→リスク比 0.55(95%信頼区間 0.29~1.02)

・GLP-1受容体作動薬→リスク比 0.94(95%信頼区間 0.49~1.83)

【全ての低血糖】

・インクレチン関連薬→リスク比 1.05(95%信頼区間 0.96~1.15) 異質性:P=0.002、I2=77.2%

・DPP-4阻害薬→リスク比 1.12(95%信頼区間 1.05~1.20)

・GLP-1受容体作動薬→リスク比 1.02(95%信頼区間 0.93~1.12)

【重度の低血糖】

・インクレチン関連薬→リスク比 0.97(95%信頼区間 0.74~1.26) 異質性:P=0.009、I2=70.4%

・DPP-4阻害薬→リスク比 1.18(95%信頼区間 1.02~1.38)

・GLP-1受容体作動薬→リスク比 0.72(95%信頼区間 0.58~0.91)

 

感想

実質的にこれまでの非劣性試験を集めた仮説生成的なメタ解析で、真剣に読む必要はなかったかもしれませんが、インクレチン関連薬としては死亡や大血管障害に対する効果は不明であるという結果になっております。

GLP-1受容体作動薬のみを見ると総死亡・心血管死亡について有意な減少が見られておりますが、NNTはそれぞれ334人と125人。

DPP-4阻害薬では急性膵炎と全ての低血糖・重度の低血糖について有意な増加が見られておりますが、NNHはそれぞれ1000人・72人・334人。

 

いずれも追跡期間が短いため、長期的な効果や副作用については不明でありますが、現時点では2型糖尿病患者に対してインクレチン関連薬を積極的に使用する理由は特に見当たらないというような印象です。

腎機能とワルファリン/起立性低血圧のリスク因子/喫煙とCKD

【私的背景】

今回は抄録しか読めないけど気になった論文を。

 

 

①「Warfarin Initiation, Atrial Fibrillation, and Kidney Function: Comparative Effectiveness and Safety of Warfarin in Older Adults With Newly Diagnosed Atrial Fibrillation.」

PMID:27998624

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27998624

 

【PECO】

: 腎機能を測定している、新規に心房細動と診断された66歳以上の患者(カナダ、14892例)

: ワルファリンの開始あり

: 開始なし

: 総死亡・虚血性脳卒中・一過性脳虚血発作の複合アウトカム、大出血による入院または救急受診

 

【チェック項目】

・研究デザイン : 後ろ向きコホート研究

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

 

【結果】

[総死亡・虚血性脳卒中・一過性脳虚血発作]

・eGFR>90→調整ハザード比 0.59(95%信頼区間 0.35~1.01)

・60~89→調整ハザード比 0.61(95%信頼区間 0.54~0.70)

・45~59→調整ハザード比 0.55(95%信頼区間 0.47~0.65)

・30~44→調整ハザード比 0.54(95%信頼区間 0.44~0.67)

・<30→調整ハザード比 0.64(95%信頼区間 0.47~0.87)

[大出血による入院または救急受診]

・eGFR 60~89→調整ハザード比 1.36(95%信頼区間 1.13~1.64)

・その他では有意な差は見られていない

 

【コメント】

大出血について有意なリスク増加が見られているものもあるものの、腎機能低下例でも大出血についてほぼ差は見られていない。

ワルファリン開始から1年以内の追跡であるため長期使用による影響については不明。

腎機能と抗凝固薬に関しては今後調べていきたい。

 

 

②「Alcohol and psychotropic drugs: risk factors for orthostatic hypotension in elderly fallers.」

PMID:24048292

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24048292

→転倒した過去がある、または転倒リスクが高い高齢者を対象とした前向き観察研究。平均年齢80.4±7.4歳。アウトカムは起立性低血圧。

 

・SSRI→オッズ比 2.42(95%信頼区間 1.56~3.75)

・SNRI→オッズ比 5.37(95%信頼区間 1.93~14.97)

・パーキンソン病→オッズ比 2.54(95%信頼区間 1.54~4.19)

・飲酒→オッズ比 2.17(95%信頼区間 1.32~3.56)

・メプロバメート→オッズ比 2.65(95%信頼区間 1.12~6.25)

・Ca拮抗薬→オッズ比 1.79(95%信頼区間 1.16~2.76)

・ARB→オッズ比 0.52(95%信頼区間 0.30~0.91)

 

【コメント】

単施設のデータを用いた観察研究と思われ、一般化は難しいかもしれないが、薬剤に関してはFRIDsとして注意したいものであり、転倒・骨折予防のために投薬時に十分に注意を促す必要があることを再確認した。

 

 

③「Cigarette smoking and chronic kidney disease in the general population: a systematic review and meta-analysis of prospective cohort studies」

Nephrol Dial Transplant gfw452. DOI: https://doi.org/10.1093/ndt/gfw452
Published: 27 February 2017

 

【PECO】

: 15のコホート研究に登録された患者(65064例)

: 喫煙あり

: 喫煙なし

: CKDの発症、末期腎不全の発症

 

【チェック項目】

・研究デザイン : 観察研究のメタ解析

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

 

【結果】

[CKD]

・喫煙あり→相対リスク1.27(95%信頼区間 1.19~1.35)

・喫煙を続けている→相対リスク 1.34(95%信頼区間 1.23~1.47)

・以前喫煙していた→相対リスク 1.15(95%信頼区間 1.08~1.23)

[末期腎不全]

喫煙あり→相対リスク 1.51(95%信頼区間 1.24~1.84)

・喫煙を続けている→相対リスク 1.91(95%信頼区間 1.39~2.64)

・以前喫煙していた→相対リスク 1.44(95%信頼区間 1.00~2.09)

 

【コメント】

喫煙者は非喫煙者と比較するとそもそも健康に対する意識が高くないと考えられ、交絡の可能性は高いのではないかと思われますが、いずれにしろタバコを吸うべきではありませんね、ええ。